全国各地で造られている日本酒は、地域によってそれぞれ風味が異なることが魅力の一つです。
ですが、数ある蔵元の中から、自分好みの日本酒をどのように選べばよいのかわからない方もいるのではないでしょうか。
今回の記事では、「各地方の日本酒の特徴」をテーマに解説します。
北海道から沖縄までの全国8ヶ所について、気候や風味といった特徴を紹介します。ぜひ参考にしてみてくださいね。
日本酒の特徴を地域ごとに解説!
日本酒の風味を大まかに分けると、北は淡麗辛口、南は甘口という傾向があります。ここでは、地域ごとにその風味の特徴を詳しく解説します。
(1)北海道
北海道は、以前は日本酒の産地としての知名度はそれほどありませんでした。
ですが、1998年(平成10年)に酒造好適米である「初雫」が作付けされて以来、状況が一変します。
北海道産の「吟風」「彗星」「きたしずく」の三種類が酒造好適米として高評価を得ており、盛んに栽培されるようになりました。
北海道の日本酒は、淡麗辛口な風味が多い傾向です。
北海道産の農産物や海産物、乳製品と相性抜群の銘柄も多く、食事とともに堪能したい方に特におすすめです。
(2)東北地方
寒冷な気候と良質な水に恵まれる東北地方は、昔から日本一の米どころと言われてきました。
酒造好適米も豊富に作られ、日本酒造りも盛んです。
長い歴史や実績などで有名な蔵元が多く、日本酒ファンに愛され続ける地域の一つです。
県によって風味の特徴が異なり、青森・秋田・岩手・山形は淡麗辛口、福島は淡麗甘口、宮城は濃醇辛口と言われています。
特に、岩手県には日本三大杜氏の一つである「南部杜氏」があり、古くからの伝統的な技術を受け継いでいます。
また、現在の雇用に合わせて杜氏制度を変更し、組合による講習会も実施しています。働きやすさのための取り組みを行っていることにも、注目が集まっています。
(3)関東地方
関東地方は、他の地方に比べると蔵元の数は少ないものの、現在でも日本酒造りは続いています。主に河川に沿って、自然の残っているエリアで造られています。
関東地方は、吟醸酒やスパークリング日本酒など、軽やかに飲めるお酒が多く造られていることが特徴です。
日本酒初心者の方や、純米酒のお米のコクが苦手という方は、まず関東地方で造られているお酒を試してみてはいかがでしょうか。
風味は、茨城・東京・千葉・神奈川は淡麗辛口、栃木・群馬・埼玉は淡麗甘口な銘柄が多い傾向です。
(4)中部地方
中部地方は寒冷な気候や名水に恵まれているため、昔から日本酒造りや米作りが盛んに行われてきました。蔵元が多いだけあり、風味も淡麗・濃醇、甘口・辛口と豊富なことも特徴です。
北信越地方は、北陸3県(富山県・石川県・福井県)と信越地方(長野県、新潟県)を合わせた名称のことです。
日本三大杜氏の一つ「越後杜氏」がある新潟県や、蔵元数全国2位の長野県だけではなく、他の県にも長い歴史のある蔵元が数多くあります。
東海地方とは、愛知県・岐阜県・三重県・静岡県の4県のことを指します。北アルプスや八ヶ岳などを水源とした清らかな水に恵まれ、日本酒造りにも活かされています。
(5)近畿地方
近畿地方には、日本三大酒どころのうちの二つである、兵庫県の灘と京都府の伏見が位置しています。そのため、日本酒ファンでなくとも知っている方が多い地域です。
日本酒発祥の地と言われる奈良県もあり、他の地域よりも古い歴史をもつ蔵元が多いことが特徴です。
室町以前、日本酒は神社で造られていた時代がありました。その影響から、蔵元と神社の強い結びつきがいまだに残っているのも近畿地方ならではと言えるでしょう。
古代の手法に沿った日本酒造りを行っていたり、神社の古代書に記録された製法を蘇らせたりしている蔵元などが現在でもあります。
日本酒と日本史をともに楽しみたい方に、特におすすめできる地域の一つです。
近畿地方の風味はバリエーションに富んでおり、蔵元や銘柄によって様々な風味を楽しむことができます。
(6)中国地方
中国地方は、豊かな水を活かした日本酒造りや米作りが行われている地域です。
特に有名なのは、日本三大酒どころの一つでもある広島県西条です。
「日本酒造りに向かない」と言われていた水質での日本酒造りを成功させたことで、一躍全国有数の酒どころになりました。
中国地方の風味の特徴は、鳥取・島根・香川・愛媛・高知は淡麗辛口、岡山・広島は淡麗甘口、山口・徳島は濃醇辛口と、それぞれかなり異なります。
全体的にフルーティーで華やかな香りが楽しめる吟醸酒や高級酒が多いこともあり、日本酒初心者にも人気です。
また、海外での販路開拓に積極的であることが、他の地域にはない大きな特徴です。
(7)四国地方
四国地方は、仁淀川や四万十川などの伏流水を使った日本酒造りが行われています。
もともとは淡麗辛口が多い傾向でしたが、最近ではやわらかな口当たりで飲みやすいものが増えてきています。
四国地方には、日本酒造りの際に地元産の原材料にこだわる蔵元が多いことが大きな特徴です。
例えば、愛媛県酒造組合による「愛媛さくらひめシリーズ」は、水や酒造好適米などの原料すべてに愛媛県産を使用しています。県内の人が地元のお酒を飲むきっかけになってほしいという願いで造られました。
日本酒だけではなく、焼酎やリキュールなどを造る際にも四国産の名産品を使うことが少なくありません。果物の生産量が多い四国ならではの魅力です。
ちなみに、香川県には、230年以上の歴史を持つ蔵元と、数年前に創業したばかりの新しい蔵元があります。
比較的珍しいので、日本酒の歴史をめぐる旅行先としてもおすすめです。
(8)九州・沖縄地方
九州・沖縄地方はかなり温暖な気候のため、日本酒造りにはあまり適していません。蔵元も他地域より少ないです。
ですが、近年は空調や冷蔵設備などが発達してきたこともあり、豊富な水源を利用した日本酒造りが次第に行われるようになりました。
九州・沖縄地方の日本酒の風味は、全体的に甘口です。
福岡・大分は淡麗甘口、長崎・熊本・鹿児島・沖縄が濃醇甘口、そして宮崎・佐賀は濃醇辛口と言われています。
日本酒に使われる米麹は主に黄麹ですが、温暖な地域では発酵しにくいことがデメリットです。
そこで、九州・沖縄地方では日本酒の発酵によく「黒麹」を使います。黒麹は温暖でも発酵しやすく、雑菌の繁殖を防ぐ働きもあります。
濃厚でコクがあるため、この地域の日本酒は甘口のものが多い傾向があります。
また、日本酒と焼酎を一緒に造っている蔵元があることも、この地域ならではの特徴です。
最近では、日本酒と焼酎の風味や製法などを組み合わせた銘柄も誕生し、人気を集めています。
まとめ:地域ごとに日本酒の特徴を味わうのもおすすめ
日本酒造りには、気候や地理といった地域の特徴が大きく影響します。そのため、日本酒の風味も北と南で異なることが一般的です。
そこで、日本酒選びの際には、それぞれの「産地」をチェックしてみるのもおすすめです。
最近では、飲み比べるためのミニボトルセットも数多く販売されています。日本各地の地域がテーマになっているセットもあるので、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
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