桜の花も僅かに残るくらいで新緑が出始めた頃、まるで季節を逆ネジにかけたように寒風が吹く、そんな日。
一度仕舞った厚手のジャンバーを引っ張り出して向かったのは東広島。
名古屋から10時過ぎの新幹線のぞみで出発。
乗り継ぎが悪く、新大阪で「さくら」に福山で「こだま」に乗り継いで13時少し前に到着。駅には富久長の今田美穂蔵元に向かえに来ていただいた。
実は3月中旬に飲食店さんと訪問の予定だったのですが・・その時には海外出張ということで生憎の不在。
蔵にまだモロミの香りがある頃に訪問したく、この日に再度訪問をお願いしたのです。
東広島駅は標高が高い場所にあり、そこから瀬戸内の旧安芸津町にある蔵に向かうには15分ほど山を下っていく感じ。
安芸津は瀬戸内港の古い町並みも残しており、今田酒造の建物もTHE日本酒蔵という風格あるもの。
挨拶もそこそこに蔵見学へ。
この蔵ならではの設備、工夫がここらそこらにあって面白い(それぞれの蔵の工夫を見るのが蔵見学の醍醐味だ~)
原料処理の水場。
洗米機が2台。1台の蔵が多い中で待ち時間を無くし、作業時間の短縮を狙う。
全量10kg単位で洗い、限定吸水。
脱水処理もして水分量の調整は確実に(OK)
今年導入の大型洗濯機が2台、これも布洗いに大活躍で効率良く袋洗いが出来る。
「空いた時間は酒を良くすることに使える!思ったより大活躍でした♪」
なるほど!
麹室へ。
衛生的なステンレス製の2部屋備える麹室。
木の麹室とは違い・・・行なった作業に対して温度の上がり下がり、乾燥などが早く→
「デジタルな感覚」なんだそうだ。
仕込み蔵へ
最後の1本が発酵中。
「本当は明日にも搾りたいのですが、気温の上がったこの時期は搾り機「槽(ふね)」は必ず一本搾ることに洗浄をかけています。そのため明後日に搾ります。
1日遅らすことによってメーターが上がってきますが、それよりも搾ったお酒がカビ汚染などで悪くならないようにする。
それを優先しています。」
醸したお酒を搾る段階で悪くする。・・それはあることで、どの蔵も神経質になるところです。
そして槽場へ移動。
ヤエガキ式の槽を2台使って同じく夏吟の1本目が搾り中
この2台で900kg仕込みを搾る。
実はこの直ぐ側に通常の搾り器「ヤブタ」も存在するが、 オフフレーバー対策の為に今は使用していない。
写真を見てもわかるように解体や洗浄がし易く理由で、この槽を使用している。
ただ900kgが最大限にしか搾れず、それによってタンクの仕込み量が決まり、しいては製造石数も決まってくる。
これ以上の製造期間を伸ばすのも会社の体制上難しく、どうすれば増石出来るか?頭を悩ましているとか。
瓶詰め場に向かうと面白い工夫があちこちに!
今年購入した「瓶詰め機」。キャスターが付いて槽場近くまでもっていって生酒は瓶詰め。
よりフレッシュで即時の瓶詰めを実現。また瓶詰め時間も大幅に短縮。
自社で工夫して作成した「急冷機。」
プレートヒーターで一回火入れし瓶詰めしたお酒を特殊ノズルでミスト状の水を吹きかけ急冷。
作業効率良く確実に急冷。
今年新設した大型の貯蔵冷蔵庫
その中には、今年初めて出す予定の発泡酒「白美」火入れ酒がスタンバイ
「白美」火入酒用に今年導入。その発泡量を計る機械
そしてグルコース計。旨味・甘みの一番いいところをとらえて火入れをするために導入。
こういう醸造専用機器は「高い~」のが悩みの種とか。(どこの蔵でも聞く話)
白美 火入れタイプを試飲! 甘みもほどほど、微発泡でいい感じの仕上がり。
飲食店さん向け定番発泡酒として活躍してくれそう♪
そしてこちらは「新しい味」だね~という新作酒。
広島安芸津ならではの「食材」に合すために造られた酒。
なるほど~という製造方法で素晴らしかった。
これは特徴あって旨い!
その「スパークリング火入れ」もあって・・富久長 らしい食中スパークリングといった感で、これもいいな~。
いずれも発売が楽しみ♪早くね~。
富久長のオリジナティーの製造方法&味わいといえば「ハイブリッド」。
そこで「ハイブリッド仕込みとは何??」ってじっくり聞いてみました。
出てくるキーワードは「乳酸菌」「生モト」「高温糖化酒母」。
それぞれの意味は解るものの、その3つがどう繋がるか解らなかったんです・・。
「高温糖化酒母」 は「速醸」のイチ技術で、通常の酒母より高温で行います。
高温なので必要でない野生酵母(麹や水の中にいる)が死滅して通常より綺麗な味の酒になります。
広島に「赤箱」という大吟醸があってそれは、綺麗で線が細い味が特徴なんですが
・・これがまさに高温糖化酒母の味。
富久長 さんは酒母造りはその手法で全て行っているそう。
そこでその滅菌された状態の「高温糖化酒母」に(ここが重要)
生モト酒母から採取された乳酸菌を添加して酒母の中で増やしていくそう。
そして通常の乳酸量になったら酵母添加する。(「差しモト」のような手法)
前から生モトを現代風に再現性高く(1本1本が同じ味になる)、そして綺麗な味で造るお酒と聞いてたんですが・・
その製法を聞いて納得!!でした。
あと、富久長 さんの酒は(今年は特に!)
クリア感あって最新型の和食酒といっていい出来。
だけどいったい!この酒の若々しさは〜
30代の蔵元杜氏が造っているような今の時代感。
その秘密は何??
先日の蔵元訪問で聞いてみたんです。そこには並々ならぬ苦労が・・
↓ ↓
「20年前に戻ってきた時と今とでは随分米が変わりました」
そうなんですか!初めて聞きましたどうな風に?
「米の水分を保つ持つ力というか性質が変わったように感じます。
昔は保湿に気を付けなくてもいい麹になったのですが、今はそういう訳にいきません。
それを私が気づくのに時間がかかって、もう一ついい麹が出来ない
=理想の酒が出来ない時期が続きました。
いろいろな酒造りの先生に調べてもらっても今迄にない症状だったため!
逆にもっと乾燥しよう・・になって逆方向に進んだりして
・・本当、随分悩みました。
解決方法を探るため広島の他の蔵元の造りに混ぜてもらって
・・蒸米を触って、柔らかいことに気付いて、それで麹米の水分量を増やしてみて
それで解決方向になったんですよ〜!
一昨年より昨年、昨年より今年、蒸しあがり水分量を増やし、本当の最後まで保湿し続けて、
最後にパッと乾かすようにして今は麹米を造っています。」
だから最近酒質が劇的に伸びてるんですね。
今迄苦労し努力した蓄積が花開いたように。!!
「さらに来年は蒸し機を変えようと計画しています。」
さらに酒良くなりますね~これは30代の蔵元と全く変わらない未来感!素晴らしいです。
今年の富久長にまずは注目ですよ~
酒泉洞堀一
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